昭和の児童書「だれも知らない小さな国」 | 真夜中の影絵だより★2005〜2012

昭和の児童書「だれも知らない小さな国」

「だれも知らない小さな国」
(佐藤さとる・著 村上勉・絵 講談社 1969年)
 
$真夜中の影絵だより ★・・・-だれも知らない小さな国

『「あった、あった。」水しぶきをあげて、くつにかけより、手をのばした。そして思わずその手をひっこめた。小さい赤い運動ぐつの中に、虫のようなものが、ぴくぴくと動いているのに気がついたからだ。しかし、それは虫ではなかった。小指しかない小さな人が、二、三人のっていて、ぼくに向かって、かわいい手をふっているのを見たのだ。』
 
$真夜中の影絵だより ★・・・-だれも知らない小さな国

一言で言うならば、大人になってから再読したい1冊です。主人公が大人だからかもしれません。子どもの頃、一度だけ出会った小人(コロボックル)たちと、大人になってあらためて出会い、彼らのために土地を買い、家を建て、彼らの世界をそっと見守ります。あー、私がその立場でも、同じことをするんだけどな~。有り金はたいて、残りはローンを組んで・・・。頭の中で現実と空想がいり混じり、なんだかコロボックルに出会えないことが悔しくてなりません。何を夢見がちな、という現実的な大人でも、きっと読み終えた後、思わずコロボックルがいないかと辺りを見渡してしまうのではないでしょうか。
  
$真夜中の影絵だより ★・・・-コロボックルシリーズ

このお話には続編があります。『豆つぶほどの小さないぬ』『星からおちた小さな人』『ふしぎな目をした男の子』・・、どれもそれぞれ楽しめます。なんというか、キジバトを拾った時のような、優しい気持ちになれます。(実際、読んでいる最中にキジバトを拾いました。)言うまでもなく、村上勉さんの挿絵も素敵です。以前、原画を拝見させてもらったことがありますが、とても繊細で感動しました。