影絵的・思い出「土手」 | 真夜中の影絵だより★2005〜2012

影絵的・思い出「土手」


昔のお母さんは、よく自転車の前と後ろに子供を乗せて走っていましたね。私の場合ひとつ下の弟がいたのでいつも座席は後ろ。前の座席に憧れたものでした。それを知ってか知らずか、ある日なぜか隣のうちの子のお母さんがひょいと私を持ち上げ自転車の前の座席に乗せると、近所の土手を走ってくれたのでした。私は嬉しくって声も出せず、滑走路を飛び立つ飛行機になった気分でひたすら全身に風をあび続けました。しばらく行くと「そろそろ帰ろうか」と言われ、私は黙ってうなずきました。そして今度は今来た道を引き返すのでした。夕日が追いかけてきます。やがて空も川も真っ赤に染まり、工場のサイレンの音が響きます。幼い頃の思い出です。